社会人が専門学校に入学して学び直しをしようと思った場合、仕事を辞めなければならない場合が多く、高額な学費の負担は厳しい場合が多いと思います。
一定の条件を満たせば、学費の7割(上限あり)と生活費の給付を受けることができる制度がありますのでご紹介します。
専門実践教育訓練給付金と教育訓練支援給付金とは
社会人が専門学校の職業実践専門課程で学ぶ場合、条件に応じて①専門実践教育訓練給付金と②教育訓練支援給付金を利用することが可能です。
職業訓練に関する給付金は他にも存在しますが、この記事ではこの2つの給付金制度について概要をご紹介します。
- ①専門実践教育訓練給付金
社会人がスキルアップのための職業訓練を受講・学校へ通うとき、学費の一部について給付を受けられる。
国に指定された専門学校の「職業実践専門課程」、専門職大学のほか、国に訓練機関として認定された民間の講座を受講するときに申請できる。
- ②教育訓練支援給付金
上記の「専門実践教育訓練給付金」を受給する人で、訓練期間に失業状態になる人が受け取れる給付金。
それでは、この2つの給付金について詳しく解説しましょう。
なお、給付金は専門学校以外の民間講座でも受給できる場合がありますが、今後の文章の体裁は専門学校の職業実践専門課程に入学する前提で書きます。
①専門実践教育訓練給付金
支給金額
- 学費の50%(上限40万円/年)を6カ月ごとに最大3年間支給されます。
→専門学校で考えた場合、年間の学費は100万円を超えますから、上限の年間40万円をもらえると考えて良いでしょう。
ただし、専門職大学のような法令上4年の修業年限の教育機関の場合、3年目終了後に4年目の給付金として上限56万円が追加支給されます。 - 卒業後1年以内に雇用保険の被保険者として再就職した場合、総受講費用の20%(上限16万円/年)が追加支給されます。
→1年以内に就職すれば過去にさかのぼり年間上限16万円もらえるので、例えば2年間の在学であれば16万円×2年分追加でもらえるということです。
雇用保険の被保険者であれば雇用形態は問わず、正社員・パート社員どちらでも良いことになります。
卒業後、起業したり個人事業主になる場合は雇用保険の適用外なので追加支給を受けられません。
最大で学費の多くを給付金でまかなえますが、学費納入後に給付されるのが注意点です。
お得な制度だと思うけど、結局まとまった金が必要か・・
対象者
給付を受けようとする人は以下の2つの条件を同時に満たす必要があります。
- 在職中または離職後1年以内
- 雇用保険の被保険者期間が3年以上。ただし、この制度を始めて利用する人は2年以上。
自分に受給資格があるかは「教育訓練給付金支給要件照会票」という書類をハローワークに提出すると教えてくれます(教えてくれるだけで申請とは無関係なので注意)。
働きながらでももらえるのか。それならば・・
・・昼間開講の専門学校の場合、働きながらは無理です。
それに、次に紹介する給付金は失業状態が給付要件になっていますのでよく考えましょう。
②教育訓練支援給付金
支給金額
支給される金額は下記の通りに計算されます。
基本手当(失業給付金)の日額 × 0.8 × 失業として認定された日数
基本手当の日額は年齢等により金額が変化します。また、上限と下限が定められています。
30歳未満 (下限:2,125円)〜(上限:6,945円)
一例を示すと、過去6カ月の平均給料月給が20万円だったとすると、支給されるのは約3,900円/日、2年間で約280万円になる計算になります。
なお、支給される期間は在学期間中となります(例:2年制であれば2年間)。
基本手当の日額計算は複雑なので必ずハローワークに確認をお願いします。
上記はあくまでも例ということで・・
対象者
教育訓練支援給付金を受けるためには下記の条件を全て満たす必要があります。
- 専門実践教育訓練給付金を受給する
- 初めての専門実践教育訓練であること
- 受講開始時に45歳未満
- 受講期間中、失業状態であること
- 夜間や通信制講座ではないこと(昼間制講座であること)
- 2025年3月までに受講開始すること
自分が給付の対象者かどうかはハローワークに問い合わせたほうが無難です。専門学校では判断はできません。
給付金の申請と受給の流れ
給付金の申請についての大まかな流れを下記に示します。
個人によって必要な書類が違う場合があるので、ハローワークに確認する必要があります。
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STEP 1
- 入学する学校を決定・説明会参加
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給付金の申請をする前に、職業実践専門課程に認定された専門学校(学科)を決めます。
より詳しい情報を得るためにはパンフレットの取り寄せ(資料請求)と比較検討は必須です。先生オープンキャンパス(学校説明会)に参加して学校の担当者と給付金について相談することをお勧めします。
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STEP 2
- 訓練前キャリアコンサルティング
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「ハローワーク」または「キャリア形成・学び直し支援センター」が実施する「訓練前キャリアコンサルティング」を受ける必要があります。
コンサルティングを受けると、次の受給要件確認申請に必要なジョブカードが交付されます。先生コンサルティングは予約制となっており、混み合っていることが多いのでかなり早めに行動することが必要です。
余裕を持つために、受講開始3カ月以上前に受けることをお勧めします。
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STEP 3
- 入学手続き
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入試に合格したら、専門学校への入学手続きを行います。
通常、この時点で入学金・授業料・教材費等を支払う必要があります。
ただし、給付金の受け取り申請は半年ごとに行うので、分割払いができる可能性があります。
分割払いを考えている方はハローワークと学校に相談しましょう。先生必ず学校側に給付金を受ける旨を伝えておきましょう。
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STEP 4
- 給付資格確認申請
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「資格確認」と名称にありますが、これが実質的な給付の申込申請で、受講開始2週間前までにハローワークに提出する必要があります。この段階で必須となる書類は下記の通りです。
- ジョブカード
- マイナンバーカード
マイナンバーカードを使用しない場合、他の書類でも代替可能です。
個人によって他に必要な書類もありますのでハローワークに確認しましょう。
なお、この手続きは電子申請が可能です。
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STEP 5
- 教育訓練支援給付金申請
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教育訓練支援給付金の申請は上記の「給付資格確認申請」と同時かその後行えます。
仕事を辞めて入学する人は、離職後1カ月以内にこの手続きが必要です。
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STEP 6
- 給付申請
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専門実践教育訓練給付金
専門実践教育訓練給付金は6ヶ月毎に支給申請することにより受け取れます。専門学校が発行する領収書や受講証明書等の各種書類が必要です。
なお、この手続きは電子申請が可能です。教育訓練支援給付金
この給付金の申請には原則として2か月に1回の教育訓練支援給付金の認定日に、ハローワークで失業の認定を受ける必要があります。
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STEP 7
- 追加給付申請
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卒業後就職し、1年以内に雇用保険の被保険者となる場合は追加の給付申請をします。
被保険者として雇用された日の翌日から起算して1か月以内に申請する必要があります。
なお、これらの給付金の詳しいルールについては下記リンクで確認できます。
また、職業実践専門課程に認定された専門学校については下記の記事で確認できます
給付金のデメリット
手続きが面倒
今回ご紹介した給付金は、申込時以外に定期的な手続きが多いため多少面倒です。
専門実践教育訓練給付金は半年ごと、教育訓練支援給付金は2カ月ごとに申請が必要です。
特に、教育訓練支援給付金はハローワークに直接足を運ぶ必要があるので手間がかかります。
手間と言っても、仕事するよりは楽じゃないかな・・
給付金だけでは全てをまかなえない
給付金だけで全てをまかなうのは無理です。
そのため、不足分を奨学金を借りたり教育ローンを組む必要があるかもしれません。
例えば、生活費に使える教育訓練支援給付金については、失業していることが給付条件ですから、バイトはできないことになります。
貯金がある程度ないと大変そうだね・・
経済的に大変だと思えば、専門学校以外の道も模索しましょう。
専門実践教育訓練給付金は専門学校の職業実践専門課程以外でも受けることができます。
なので、看護師や美容師のように専門学校卒業が必須な場合を除けば他の民間講座で学ぶのも良いかもしれません。
例えば、IT系のスキルであれば、このページでご紹介した給付金を使えて、しかも短期間でスキルアップ可能な講座があります。
さいごに
当面の運転資金のために給付金をもらうことは重要ですが、どこで学び直しをするかは一生を左右します。
専門学校選びならば多くの学校から資料請求し、比較検討することをお勧めします。